東北各県では、クマによる人身被害や農作物の食害が多発している。このため、各自治体はクマの駆除を行っているが、動物愛護団体や一部の住民からは、駆除に対する抗議や反対の声が先月ごろから続いている。一方で、被害に悩む住民からは、駆除を求める意見や要望も多く寄せられている。クマ被害に対する対策は、どのように進められるべきなのだろうか。



秋田県では人身被害が全国最悪 駆除に「なぜ殺す」と苦情も

秋田県では、今年に入ってから、クマによる人身被害が全国最悪36件に上っている。特に10月上旬には、1日に4件もの被害が発生し、ピークを迎えた。このため、県は、クマの生息密度が高い地域や被害が多い地域を重点的に駆除する方針を示した。

しかし、駆除に対しては、動物愛護団体や一部の住民から「なぜ殺すのか」「かわいそうだ」といった強い口調の苦情が1日数件は来るという。秋田県によると、抗議が最も多かったのは、美郷町の畳店の作業小屋に10月4日朝から親子とみられる3頭のクマがとどまった直後だ。県は、クマが人に襲いかかる可能性が高いと判断し、駆除した。しかし、このことがSNSなどで拡散されると、「かわいそうだ」といった電話やメールが殺到した。電話口で号泣する人もいて、対応した職員の業務に支障が出たという。



秋田県の佐竹敬久知事は6日の記者会見で、「感情論が多い。理解を得られるよう、国が行動を取ってほしい」と要望した。佐竹氏らによると、被害のない地域からの連絡が多く、同一とみられる人が何回も抗議してくるケースもあったという。

岩手県や福島県でも抗議や要望が増加 住民からは不安の声も

秋田県に次いで、人身被害が多い岩手県では、今年に入ってから25件の被害が発生している。岩手県では、クマの駆除は、被害が発生した場合や、人里に近づいた場合に限定して行っている。しかし、先月中旬から「保護すべきだ」などの意見や要望が増え、ここ3週間で30件ほど来たという。岩手県の担当者は、「クマの生態や被害の実態を知ってもらうことが大切だ」と話す。



福島県では、今年に入ってから16件の人身被害が発生している。福島県では、クマの駆除は、被害が発生した場合や、人に危害を及ぼす恐れがある場合に行っている。福島県にも、先月ごろから「クマを殺すな」などの抗議が1日当たり多くて4~5件の電話がかかるという。抗議に加えて、住民から「クマを何とかしてほしい」と不安を訴える声もあるという。

クマ被害の原因は食糧不足と気候変動 専門家は共存を呼びかける

クマ被害が多発する背景には、クマの食糧不足や気候変動があるという。クマは、冬眠に備えて秋になると大量に食べるが、今年は、クマの主食であるドングリやクリなどの木の実が不作だったという。また、気候変動によって、クマの生息域が変化し、人里に近づくこともあるという。

クマと人との共存を研究する専門家は、「クマは人間に敵対する動物ではない。クマが人に襲いかかるのは、驚かせたり、追い詰めたりしたときだ。クマとのトラブルを防ぐには、クマの生態を理解し、適切な対策をとることが必要だ」と呼びかける。具体的には、クマの出没に注意する、クマの好物を庭に植えない、ゴミを放置しない、クマの姿を見たら大声で知らせるなどの方法があるという。


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