パナマの首都パナマシティ西部にあるチャメ地区で、鉱山開発に反対するデモ隊に対して弁護士が発砲し、2人が死亡するという衝撃的な事件が発生した。犯人は弁護士兼大学教授のケネス・ダーリントン容疑者(52歳)で、現場で逮捕された。
事件の経緯
事件は2023年11月7日の午後に起きた。ダーリントン容疑者は、鉱山開発に反対するデモ隊が高速道路を封鎖している現場に車で到着した。ダーリントン容疑者は、デモ隊に対して道路を開放するように説得を試みたが、デモ隊との間に口論が起こった。その際、ダーリントン容疑者は自分のポケットから拳銃を取り出し、デモ隊に対してデモの縮小を要求した。しかし、デモ隊はダーリントン容疑者の要求を拒否した。
すると、ダーリントン容疑者はデモ参加者の1人に対して発砲した。その参加者は頭部に被弾し、即死した。現場には恐怖と動揺が広がった。ダーリントン容疑者は、デモ隊が建てていた石やタイヤのバリケードを解体しようとした。そのさなか、別の参加者がダーリントン容疑者に対して立ち向かった。しかし、ダーリントン容疑者は再び発砲し、その参加者も胸部に被弾した。その参加者は道路脇に倒れ込み、病院に搬送されたが、死亡が確認された。
その後、現場に駆けつけた警察によって、ダーリントン容疑者は現行犯逮捕された。ダーリントン容疑者は、殺人罪などの容疑で起訴される見込みである。
鉱山開発に対する抗議活動
チャメ地区は、パナマの生物多様性に富んだジャングルが存在する地域である。この地域では、カナダに本拠を置く鉱山会社「First Quantum Minerals」が、この地域最大の銅鉱山を20年以上採掘することを認める大規模な契約を地元当局と結ぼうとしていた。この契約には、鉱山開発に伴う環境破壊や人権侵害、公共サービスの低下などの懸念があった。
一部の環境保護活動家や地元住民は、この契約に対して抗議活動を展開していた。彼らは、ダーリントン容疑者による銃撃事件発生までの3週間に渡り、高速道路の封鎖を行っていた。彼らは、鉱山開発の中止や契約の見直しを求めていた。
海外メディアのNew York Postによると、この道路封鎖によって、食料や燃料、医薬品の輸送に影響が出ているだけでなく、企業は毎日最大8000万ドル(約120億円)もの損失が発生し、付近の学校は1週間以上閉鎖されているとのことである。
政府の対応
パナマのラウレンティーノ・コルティソ大統領は、死亡した2名の参加者の遺族に対して哀悼の意を表明した。また、コルティソ大統領は、鉱山開発に関する対話の再開を呼びかけた。コルティソ大統領は、鉱山開発はパナマの経済発展に貢献すると主張しているが、同時に環境や人権の保護にも配慮すると述べた。
一方、抗議活動を主導している環境団体「チャメの声」は、銃撃事件を非難し、鉱山開発の中止を改めて要求した。同団体の代表者は、「ダーリントン容疑者は、鉱山会社の利益を守るためにデモ隊を殺害しようとした」と主張した。同団体は、鉱山開発に反対するデモを継続すると表明した。
事件の影響
この事件は、パナマの社会に衝撃を与えた。鉱山開発に賛成する人々と反対する人々の対立が深まる恐れがある。また、この事件は、パナマの法治や治安の問題を浮き彫りにした。パナマでは、過去にも鉱山開発に反対するデモ隊に対して暴力が行われたことがある。2011年には、パナマ西部のコクレ県で、鉱山開発に反対するデモ隊に対して警察が発砲し、2人が死亡するという事件が起きた。
パナマは、中米で最も経済成長率が高い国の一つであるが、同時に貧困や格差、環境問題などの課題も抱えている。鉱山開発は、パナマの経済発展と環境保護の間のジレンマを象徴する問題である。パナマ政府は、この問題に対して、平和的で持続可能な解決策を見つける必要があるだろう。