最高裁大法廷は25日、性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更するためには生殖機能をなくす手術が必要とされている法律の要件は、憲法に違反しているとの判断を初めて示しました。この判断は、戸籍上は男性で女性として生活している申立人が、手術を受けずに性別変更を認めるよう求めた訴訟に対するものです。申立人は、法律で性別変更の要件に生殖能力をなくす手術を求めていることは、憲法で保障された人格権や自由権に違反すると主張していました。
最高裁大法廷は、「生殖機能がないこと」を求める要件は、「意思に反して生殖機能をなくす手術を受けるか、性別変更をすることを断念するかという過酷な二者択一を迫るものになっており、人格権や自由権に対する過度な制約である」として、違憲で無効だとしました。
一方で、「変更する性別の性器に近い見た目をもつこと」を求める要件については、最高裁大法廷は判断を示さず、審理を高等裁判所でやり直すよう命じました。この要件は、申立人が満たしているかどうかが争われています。
申立人の代理人弁護士は、「今回の判断は予想外な結果で大変驚いております。今回の結果がよい方向に結びつくきっかけになると嬉しく思います」とコメントしました。一方で、申立人の性別変更を認めるかどうかが今後高裁で判断されることについては、「非常に残念」とコメントしているということです。
この訴訟は、日本で初めて性同一性障害の人が戸籍上の性別変更を求めた訴訟から始まったもので、2004年に最高裁が初めて性別変更を認めた際に定められた法律の要件が合憲かどうかが問われています。この問題は、国際的にも注目されており、欧州人権裁判所や国連人権委員会などが手術要件を批判しています。