東京・池袋で2019年4月に起きた乗用車の暴走事故で、妻子を亡くした松永拓也さん(37)ら遺族9人が、飯塚幸三受刑者(92)側に計約1億7000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が27日、東京地裁で言い渡された。平山馨裁判長は受刑者側に対し、遺族4人に計約1億4000万円を支払うよう命じた。
事故は2019年4月19日午後3時半ごろ、池袋駅西口交差点付近で発生した。飯塚受刑者は自動車を運転中にアクセルとブレーキを踏み間違え、歩道に乗り上げて歩行者を次々とはねた。この事故で松永さんの妻・真菜さん(31)と長女・莉子ちゃん(3)が死亡し、飯塚受刑者を含む10人が重軽傷を負った。
飯塚受刑者は今年2月に過失運転致死傷罪で起訴され、同月に懲役5年の実刑判決を受けた。しかし、飯塚受刑者は控訴せず、判決が確定した。
遺族らは昨年6月に損害賠償訴訟を提起し、飯塚受刑者の過失や責任能力、事故の影響などを争った。遺族らは「飯塚受刑者は事故前から体調不良や視力低下などの症状がありながらも運転を続けた」「飯塚受刑者は事故後も反省や謝罪の態度を見せず、被害者や社会に対する配慮や責任感が欠如している」と主張した。
一方、飯塚受刑者側は「飯塚受刑者は事故当時に意識障害や認知症などの精神障害があった」「飯塚受刑者は事故後に心身の衰弱や高齢などから記憶喪失や言語障害などが生じた」「飯塚受刑者は事故の原因や結果について十分な認識や理解ができていない」と反論した。
裁判では、飯塚受刑者の精神鑑定や事故現場の再現実験などが行われた。平山裁判長は判決理由で、「飯塚受刑者は事故当時に精神障害があったという証拠はなく、責任能力が欠けていたとは認められない」「飯塚受刑者は事故後に記憶喪失や言語障害があったとしても、事故の原因や結果についての認識や理解ができなかったとは言えない」と述べた。また、「飯塚受刑者は事故前から体調不良や視力低下などの症状がありながらも運転を続けたことは重大な過失である」「飯塚受刑者は事故後も反省や謝罪の態度を見せず、被害者や社会に対する配慮や責任感が欠如していることは非難に値する」と指摘した。
平山裁判長は、遺族らが求めた損害賠償額については「一部過大である」として、一部を減額した。しかし、「飯塚受刑者の過失の程度や事故の影響を考慮すれば、遺族らが受けた精神的苦痛は甚大である」として、高額の賠償金を命じた。
判決に対し、松永さんは「飯塚受刑者の責任能力が認められたことは評価できるが、賠償金の額は納得できない。控訴するかどうかは弁護士と相談したい」とコメントした。飯塚受刑者側の弁護士は「判決内容を精査し、今後の対応を検討する」と述べた。