岸田文雄首相(自民党総裁)は、年内の衆院解散・総選挙を見送る方針を固めた。内閣支持率が低迷する中、衆院選を戦う環境が整っていないと判断したためだ。首相は当面、信頼回復に向けて物価高対策などに全力を挙げるとともに、年明け以降に解散のタイミングを再検討する考えだ。複数の政府・自民関係者が9日、明らかにした。

首相は9日午後、首相官邸で記者団に対し、「まずは経済対策、先送りできない課題に一つ一つ、一意専心取り組んでいく。それ以外のことは考えていない」と述べ、年内の衆院解散の可能性を否定した。首相周辺も「年内解散はない」と断言した。

首相は同日午前、自民党本部で麻生太郎副総裁や茂木敏充幹事長らと会談し、今後の政権運営について協議した。衆院議員の任期が10月末に折り返したことから、与党内には首相が今国会中の解散を探っているとの観測があったが、首相は解散の意思を示さなかったという。



首相は9月に内閣改造・党役員人事を行い、政権の再始動をアピールした。10月には世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を請求したほか、所得税などの減税策も打ち出した。しかし、これらの施策は政権の支持率回復にはつながらず、10月の衆参2補欠選挙では自民党は1勝1敗に終わった。内閣支持率は危険水域とされる2割台に落ち込む世論調査も相次いだ。

また、不祥事に伴う法務副大臣など政務三役の辞任が続き、政権の不安定さが浮き彫りになった。与党内では、早期解散は困難との見方が広がっていた。



2023年度補正予算案の国会審議は11月末ごろまでかかる見込みで、その後は24年度予算案の編成作業が本格化する。首相は11月末からアラブ首長国連邦(UAE)で開かれる国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)への出席を検討している。12月16~18日には東京で東南アジア諸国連合(ASEAN)との特別首脳会議を予定しており、政治日程の窮屈さも考慮したとみられる。

与党内では、次の解散のタイミングは24年度予算案成立後の来年4~6月との見方が出ている。首相は来秋の党総裁選前に衆院選で勝利し、総裁選を無風で乗り切る戦略を含め、解散の機会を慎重に探る考えだ。



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